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Ohne dich kann ich nicht leben.

きみがいないと生きていけない

アンビリーバーズ

無性に生きるのがめんどくさくなったわたしと臨也くんのお話

 死んじゃおうかなあ。そんな言葉が気がつけば口から出ていた。わたし自身これには驚いて、慌てて手で口を押さえる。
 それでも臨也くんの耳にはしっかり届いたようで、臨也くんはしかめっ面をしてわたしを見た。
「自殺なんてしたら許さないよ」
「しないよ。言ってみただけ」
「そんな物騒なこと、言わないでくれないかい?」
 臨也くんがわたしの座るソファーまでやってくると、わたしの隣に腰かけた。
「なにか嫌なことでもあったのかい?」
 臨也くんが殊更優しい声音で言う。わたしは今日のことを、昨日のことを思い出してみた。
「嫌なことはなかったよ」
 思い出せども、思い出せやしなかった。いつもと同じ、単調な世界。わたしは機械のように生きている。昼頃に起きて、たまに病院へ行って、薬を飲むだけの毎日。
「こんな人生が嫌なんだ」
 わたしは言う。こんな人生は嫌なんだ。わたしの思うがままにならない世界が嫌いなんだ、と。
 作家になる。その夢があるから、今を生きていられる。その夢まで失ってしまったら、わたしはどうすればいい?
「人生なんてそんなものさ」
 臨也くんが言った。
「ままならなくて、思い通りになんかならない。でも、だからこそ俺達は今を生きているんだよ。全てが思い通りになってしまったら、いずれ生きる意味を見失ってしまう。そうだろ?」
 わたしは臨也くんの言葉に閉口した。先程からゆらゆらと揺れる小さなキャンドルの炎が、まるでわたしのようだと思った。
「臨也くんは、わたしが生きていてもいいと思う?」
 わたしは恐る恐る聞く。
「もちろんだよ。サコちゃんは、俺を置いて死ぬ気でいるの?」
「そういうわけじゃないけど」
「じゃあそれでいいじゃないか」
 臨也くんは立ち上がると大きく伸びをした。
「サコちゃんは俺のために生きる。俺が寂しくないように。それでいいだろう? 少なくとも、俺はサコちゃんが死んだら悲しむよ」
 どうせすぐ代わりを見つけるくせに。わたしは思ったが、言葉にするのは憚られた。
「じゃあ、わたしは臨也くんのために生きるよ」
「うん、そうしてくれよ。それが俺にとっても、サコちゃんにとっても、きっと一番いい選択さ」
 臨也くんはそう言ってわたしの頭を撫でた。幼子にするように、わしゃわしゃと髪の毛を混ぜながら。
「死ぬ時は二人一緒がいいね」
 臨也くんが言う。わたしはそれに頷くと、臨也くんが笑ったのがわかった。