Ohne dich kann ich nicht leben.

きみがいないと生きていけない

Hug

統失で不安定なわたしと臨也くんの話

 血が針から噴き出すのをわたしはぼんやりと眺めていた。瀉血。最近覚えた自傷行為
 不安はどうにも収まらなかった。いつだって、何をしていたってこの得体の知れない不安感はわたしを苛める。一体何が原因なのかを考えてみても、自分の納得のいく理由は見つからない。ただ、死にたい、消えたい、いなくなくなりたいと思うばかりで、自分を傷つけるために腕に針を刺していた。
 耳に穴を開けることにはもう飽きた。わたしにとって、ピアスの穴を開けるというのは、単なる自傷行為に過ぎなかった。開けた後で可愛らしい小ぶりのピアスをつけるわけでもない。最初に穴を開けてから、ずっとバーベルを刺し続けているだけだった。耳に針を刺す行為から、腕に針を刺す行為に変わっただけだ。わたしのやっていることに大した代わりはなかった。
 その時、浴室の扉が開く音がした。振り向くと、そこには臨也くんが立っていた。未だ噴き出している血を見て、臨也くんが眉を顰める。嫌われた? どうしよう。わたしがそう思っていると、臨也くんが駆血帯を外して、わたしの腕から針を抜いた。
「まったく。帰ってきてもおかえりの一言もないから何をしてるのかと思ったら」
 臨也くんは呆れたように言った。わたしは小さな声で「ごめんなさい」と言った。
「別に責めてるわけじゃないから、謝らなくてもいいよ。ただ、自分で自分を傷つけるのはやめてほしいんだ」
 臨也くんが後ろからわたしを抱き締める。
「俺はサコちゃんに生きていてほしい。病気のせいで不安定だっていうのもわかるけど、それでもこういった自傷行為はしてほしくない」
 そう言った臨也くんの表情は見えなかった。耳元に吹き込まれる声に、思わず首を縦に振りそうになる。そうすることは、できなかった。守れない約束をするわけにはいかなかった。
「ねえ、臨也くん。わたし、きっとこれからも瀉血を繰り返すよ。そうしたら、臨也くんはわたしを見捨てる?」
 わたしが恐る恐る聞くと、そんなわけないじゃないか、と臨也くんが言った。
「俺はこの街でサコちゃんと一生一緒にいるつもりなんだから、そんなことで見捨てるわけないじゃないか」
 臨也くんがわたしを抱き締める力を強めた。
「俺たちは持ちつ持たれつ、そんな関係だ。共依存と言ってもいい。今の俺にはサコちゃんが必要だし、サコちゃんも今は俺が必要。そうだろう?」
 それを聞くと涙が溢れてきて、わたしは静かにその場で泣いた。臨也くんに抱き締められながら泣いた。
「臨也くん、わたしを置いていかないでね」
「サコちゃんこそ、俺を置いていかないでね」
 そう言って臨也くんが小指をわたしの小指に巻きつけた。
「はい、指切り。嘘ついたら針千本飲ますからね」
 臨也くんが笑って言った。その笑顔を見て、わたしもようやく笑うことができた。