Ohne dich kann ich nicht leben.

きみがいないと生きていけない

ハッピーバースデー

誕生日を迎えたわたしと臨也くんの話

 わたしはその日一日、憂鬱な気分でいた。今日はわたしの誕生日。また一つ歳を重ねてしまったのだと、実感のわかないままわたしはソファーの上に寝転んでいた。
 誕生日なんて、ちっとも嬉しくなかった。わたしは目を閉じる。すると、幼かった頃のわたしの姿が脳裏に浮かんだ。あの時は若かったなあ。そう思える出来事がたくさんあった。
 けれど、今のわたしには何もない。統合失調症という病名がついているだけの、空虚な人間だった。小説を書くのが好きで、作家として生きていける人生を望んでいた。しかし、その夢も揺らいできていた。本当にわたしは作家になれるのだろうか? 自分には才能がないのではないか? そんなことばかり考えてしまう。
 時間は有限だ。際限なくあるわけじゃない。時間さえあれば生み出せる作品も、時間がなければ生み出せない。わたしはそれがつらいのだ。明けない夜がほしくて仕方なかった。
「なんて顔してるんだい」
 ソファーに寝転んでいるわたしに、臨也くんが言った。
「今日は誕生日だろう? もっと嬉しそうな顔しないと」
「だって、嬉しくないから」
「そうかい? 俺は嬉しいけどね。なんせ、サコちゃんが生まれてきた日なんだから」
 わたしはそれを聞いて起き上がる。
「喜んでもいいの?」
「もちろんさ。簡単な誕生日プレゼントもあるんだ。見てみてくれないかい?」
 臨也くんが大きな袋を取り出した。中を開けてみてみると、そこには猫のぬいぐるみが入っていた。
「猫。好きだろう?」
 臨也くんが笑った。わたしもつられて笑う。
「ありがとう」
「どういたしまして。……さあ、ご飯にしよう。その後食べるケーキも買ってあるんだ。一緒に食べよう」
 臨也くんはそう言うと、わたしの手を引いた。
「サコちゃん、誕生日おめでとう」
 それを聞くとなんだか泣けてきて、ありがとうと言いながらわたしは涙をながした。そんなわたしのことを、臨也くんは抱き締めて、涙が止まるのを待っていてくれた。

 今日はわたしの誕生日。
 わたしが生まれた日。
 それを臨也くんに祝ってもらえる嬉しさを噛み締めながら、臨也くんの腕の中で少し泣いた。
 これからの将来を悲観しながらも、わたしは少しだけ笑った。